2026年6月11日

こんにちは。四谷三丁目の歯医者、紬デンタルオフィス四谷三丁目の歯科衛生士Cです。
歯みがきやフロスをしたとき、歯ぐきから血が出たことはありますか?
「強く磨きすぎたのかな」「少し血が出るくらいなら大丈夫かな」「痛みはないから様子を見てみよう」
このように考えて、そのままにしてしまう方も少なくありません。気になりながらも、忙しい日常の中でつい後回しにしてしまう——そういった方のお気持ちはよくわかります。
結論からいうと、歯ぐきから血が出る原因として多いのは、歯肉炎や歯周病です。ただし、磨き方や道具の使い方、親知らず周囲の炎症、服用中の薬や全身状態が関係していることもあります。
特に、歯みがきやフロスのたびに出血する、同じ場所から繰り返し出血する、歯ぐきの腫れ・口臭・歯のぐらつきがある場合は、早めに歯科医院で確認することをおすすめします。
大切なのは、出血を一時的に止めることではなく、なぜ出血しているのかを確認することです。今回は、歯科衛生士の視点から、歯ぐきの出血の原因と受診の目安について解説します。
歯ぐきから血が出る主な原因

歯ぐきから血が出る原因として多いのが、歯肉炎や歯周病です。
歯肉炎で歯ぐきから血が出る
歯と歯ぐきの境目にプラークが残ることで、歯ぐきに炎症が起きている状態です。
歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきやフロスのときに出血しやすくなったりします。
この炎症が歯ぐきだけにとどまっている段階が、歯肉炎です。さらに進行して、歯を支えている骨にまで影響が及ぶと、歯周炎——いわゆる歯周病へと進んでいくことがあります。
歯周病で歯ぐきから血が出る
歯周病とは、歯と歯ぐきの境目にたまったプラークが原因で歯ぐきに炎症が起こり、進行すると歯を支えている骨が少しずつ失われていく病気です。
初期の段階では歯ぐきの腫れや出血がみられることがありますが、強い痛みが出ないことも多く、自分では気づきにくいのが特徴です。
進行すると歯周ポケットが深くなり、歯がぐらついたり噛みにくくなったりすることがあります。
歯周病は、早い段階で炎症の原因を確認し、プラークや歯石を適切に取り除くことが大切です。
プラークが残ると、歯ぐきには比較的短期間でも炎症が起こる
健康な歯ぐきの方が口腔清掃を中止すると、プラークが蓄積し、約9〜21日で軽度の歯肉炎が生じたことが報告されています。 (Harald Löe ら・1965年「Experimental Gingivitis in Man」より)
つまり、歯肉炎は「何年も放置した結果だけで起こるもの」ではありません。磨き残しが続くことで、比較的短期間でも歯ぐきに炎症が起こる可能性があります。
ここで大切なのは、「毎日歯みがきをしているか」だけではありません。本当に重要なのは、「炎症の原因になるプラークが落とせているか」です。
プラークを落とせば、歯肉炎は改善することがある
一方で、歯肉炎は原因となるプラークを取り除くことで、改善する可能性があります。
同じ実験的歯肉炎の研究では、口腔清掃を再開するとプラークが減少し、それに伴って歯ぐきの炎症も改善していくことが示されています。報告によっては、清掃再開後7〜11日ほどでプラークの状態が実験前の水準に近づいたとされています。
毎日磨いていても、磨き残しは起こる
歯ぐきから血が出ると、「毎日歯みがきをしているのに、なぜ?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、毎日磨いていることと、プラークが落とせていることは、同じではありません。実際には、毎日歯みがきをしていても、磨き残しは起こります。
次のような場所はプラークが残りやすい部分です。
①歯と歯ぐきの境目
②歯と歯の間
③奥歯の裏側
④一番奥の歯の後ろ側
⑤歯並びが重なっている部分
⑥不適合な被せ物や詰め物の周囲
⑦歯ぐきが下がって根の面が見えている部分
⑧親知らずの周囲
これらの場所は、歯ブラシが当たりにくかったり、見えにくかったり、手の動かし方が難しかったりします。
また、自分ではしっかり磨けていると思っていても、実際にどこにプラークが残っているかは自分では分かりにくいものです。
テレビやスマホを見ながらの「ながら磨き」が習慣になっていると、気づかないうちに毎回同じ場所を磨き飛ばしてしまうことがあります。忙しい朝に急いで磨く場合なども、同様に磨き残しが出やすくなります。
歯石があると、歯ブラシだけでは改善しにくいことがある

プラークが長く残ると、唾液中の成分によって石灰化して歯石になります。
歯石は、歯ブラシでは取り除くことができません。特に、歯ぐきの中に入り込んだ歯石は、ご自身で確認することも困難です。
歯石の表面はざらついているため、プラークが付着しやすく、歯ぐきの炎症が続く原因になることがあります。
そのため、歯ぐきからの出血が続いている場合、単に「磨き方を変えればよい」とは限りません。
歯石がついている場合や、歯周ポケットが深くなっている場合は、歯科医院での検査と処置が必要になります。
歯周病以外で歯ぐきから血が出る原因
歯ぐきから出血する原因として多いのは歯肉炎や歯周病ですが、それだけが原因とは限りません。
磨き方・ハブラシなどの道具の使い方
硬い歯ブラシで強く磨きすぎている場合や、サイズの合わない歯間ブラシを無理に使っている場合、歯ぐきが傷ついて出血することがあります。
フロスの使い始め
歯と歯の間に炎症があったり、使い方に慣れていなかったりして、出血することもあります。
智歯周囲炎
親知らずの周りに汚れがたまり、歯ぐきが炎症を起こすことで、腫れや痛み、出血がみられることがあります。
根尖病変・歯根破折
根の先の炎症ではできもののような腫れや排膿が、根のひびでは部分的に深い歯周ポケットや歯ぐきの腫れがみられることがあります。
薬や全身状態の影響
服用中の薬や全身状態が関係して、出血しやすくなることもあります。
このように、見た目には似ていても、原因によって必要な治療は異なります。「歯周病だろう」「磨きすぎだろう」と自己判断せず、原因を確認することが大切です。
歯ぐきからの出血で歯科医院を受診する目安
次のような場合は、歯科医院で確認することをおすすめします。
☞歯みがきのたびに血が出る
☞同じ場所から繰り返し出血する
☞歯ぐきが赤く腫れている
☞歯ぐきが下がってきた気がする
☞口臭が気になる
☞歯が浮いた感じがする
☞歯がぐらつく
☞歯石がついている
☞痛みはないが、出血が続いている
特に、痛みがないまま続く出血は注意が必要です。
歯周病は、虫歯のように強い痛みが出るとは限りません。痛みがないまま進行することがあるため、出血は見逃さない方がよいサインです。
歯科医院では何を確認するのか
歯周ポケットの深さ
歯と歯ぐきの間にある溝が深くなっている場合、歯ぐきの中にプラークや歯石が入り込んでいる可能性があります。
検査時の出血の有無
出血は、歯ぐきに炎症があるかどうかを判断する材料のひとつです。
歯石の付着
見える部分だけでなく、歯ぐきの中に歯石がついていないかを確認します。
補綴物の適合
被せ物や詰め物の境目に段差や隙間がある場合、汚れが溜まりやすく、歯ぐきに炎症が起きやすくなることがあります。
虫歯(カリエス)の有無
虫歯が歯ぐきの近くまで進行していると、炎症や出血の原因になることがあります。
親知らずの状態
親知らずの周囲に汚れがたまっていないか、炎症が起きていないかを確認します。
歯根破折の有無
歯の根にひびが入っている場合、部分的に深い歯周ポケットができたり、歯ぐきが腫れたりすることがあります。
骨の状態・根尖性歯周炎(レントゲン)
歯周病の進行や歯根破折、根の先の炎症(根尖病変)などは、レントゲンで確認することがあります。根尖病変では、歯ぐきにできもののような腫れや排膿がみられることもあります。
磨き残しの場所・清掃器具の使い方
出血を繰り返している場所には、その方ごとの磨き残しの癖が隠れていることがあります。歯ブラシ・フロス・歯間ブラシの使い方も合わせて確認します。
出血を止めることより、原因を確認することが大切
歯ぐきから血が出ると、「どうすれば血が止まるか」を考えがちです。もちろん、強く磨きすぎている場合は、ブラッシング圧を見直す必要があります。
フロスや歯間ブラシのサイズが合っていない場合は、道具の選び方も大切です。しかし、出血の背景に歯肉炎や歯周病がある場合、表面的に血が出なくなっただけでは、問題が解決したとはいえません。
重要なのは、なぜ血が出ているのかを確認することです。
毎日歯みがきをしていても、プラークが残りやすい場所はあります。その部分に炎症が起きると、歯ぐきから出血しやすくなります。
また出血が続く場合は、「磨いているから大丈夫」と自己判断せず、一度歯科医院で確認することをおすすめします。プラークの残り方や歯石の有無、歯周病の進行だけでなく、補綴物の状態や歯根破折など、ご自身では気づきにくい原因が隠れていることもあるためです。
まとめ
歯ぐきから血が出る原因として多いのは、歯肉炎や歯周病です。
研究でも、プラークが蓄積すると比較的短期間で歯ぐきに炎症が起こることが示されています。一方で、原因となるプラークを適切に取り除くことができれば、歯肉炎による炎症や出血は改善する可能性があります。
ただし、大切なのは「歯みがきをしているか」ではなく、「プラークが落とせているか」です。
毎日磨いていても、歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間、奥歯の裏側、歯並びが重なっている部分などには、磨き残しが起こることがあります。
また、歯石がついている場合や、歯周ポケットが深くなっている場合、歯の根の病気や親知らず周囲の炎症などが関係している場合は、自己判断では原因を見分けることが難しいこともあります。
歯みがきやフロスのたびに出血する方、歯ぐきの腫れや口臭が気になる方、痛みはないけれど出血が続いている方は、一度歯科医院で確認することをおすすめします。
執筆:歯科衛生士C(紬デンタルオフィス)
歯科医師監修:小糸 潤(院長)
最終更新日:2026年6月11日
よくある質問
Q. 歯みがきで歯ぐきから血が出るのは歯周病ですか?
A. 歯肉炎や歯周病が原因のことは多いですが、必ずしも歯周病とは限りません。強いブラッシング圧、歯間ブラシのサイズ、親知らず周囲の炎症、服用中の薬や全身状態などが関係することもあります。繰り返し出血する場合は、歯科医院で原因を確認しましょう。
Q. フロスをすると血が出る場合、続けても大丈夫ですか?
A. 歯と歯の間に炎症がある場合、フロスで出血することがあります。一方で、フロスを強く押し込みすぎて歯ぐきを傷つけている場合もあります。出血が続く場合は、使い方や原因を確認することが大切です。
Q. 痛みがなければ、歯ぐきから血が出ても様子を見てよいですか?
A. 痛みがなくても、出血が続く場合は注意が必要です。歯周病は強い痛みがないまま進行することがあります。歯みがきやフロスのたびに出血する場合は、一度歯科医院で確認することをおすすめします。
Q. 歯ぐきから血が出たら、歯科医院では何を調べますか?
A. 歯周ポケットの深さ、検査時の出血、歯石の付着、磨き残し、虫歯、親知らず、被せ物や詰め物の状態、必要に応じてレントゲンによる骨の状態などを確認します。
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